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【ネタバレ有り】君が欲しいもの、僕が欲しいもの〜「ラ・ラ・ランド」

投稿日:2017年9月15日 更新日:

ラ・ラ・ランド、見ました。いやぁ、なんて、なんて切ない作品でしょうか。誰も不幸になったわけじゃない。夢は叶った。でも、失うものが無かったわけじゃない。これはかなり刺さりました。大なり小なり、夢と現実の折り合いに苦心したことがあるなら、このエンディングで胸が苦しくなるでしょう。

さて、「恍惚、陶酔状態」を表す「ラ・ラ・ランド」ですが、クライマックスのシーンにセブとミアが「もしもの世界」を巡る空想が流れました。このラ・ラ・ランドを象徴するような空想シーンですが、このシーンに対して「セブの空想なのかミアの空想なのか」という議論があります。公式が答えを明言していない議論に対して僕なりの考えを述べていこうと思います。

結論から言うと、僕は「セブの妄想」だと思っています。では、その理由を書いていきます。

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現実に追われる夢追い人

まず、彼らはお互いに夢の街ロサンゼルスで「夢叶わぬ者」として出会います。自らがオーナーのジャズバーを開きたいセブ、女優として花を咲かせたいミア。しかし、前者は詐欺師に騙され金は無くピアニストの仕事もクビ、後者は数あるオーディションに片っ端から挑むも相手にすらされない。現実的な将来を考えたとき、「夢を諦める」選択肢が目の前まで近づいている状態でした。

そんな二人でしたが、夢を追う者同士で共感し合い、恋仲になります。恵まれない状況でも、愛を育んでいく二人。そして転機が訪れます。セブの成功です。

友人キースからバンドの誘いを受けたセブは一度話を断ります。ですが、家族と通話するミアの話を聞いたセブは、自身の夢を一旦脇に置いて、キースのバンドに加入することを決めます。キースのバンドはセブが求めているオールドタイプのジャズスタイルではなく、そのことが誘いを断る理由にもなっていましたが、ミアとの生活を優先するためにバンドへの加入を決めました。

バンドは見事に成功。セブはヒットアルバムを生み出してはツアーで世界を巡る生活をするようになります。そして、二人のすれ違いが始まります。

妥協と夢

多忙になったセブはミアと会える時間が減っていきます。ミアは寂しさを感じながらも自身が手掛ける一人舞台の準備を進めていました。

少ない合間を縫って、セブはミアと自宅で食事をする機会を作りました。お互いの近況を語る二人。ここで二人のすれ違いは決定的なものになってしまいます。

バンドの成功によって各地を飛び回るセブは、ミアとの時間を増やすためミアにツアーに帯同しないかと提案します。ですが、ミアは舞台の準備もあるのでこの話を断ります。

噛み合わない二人。そして、ミアはセブに対して「あなたの夢はどうしたの?」と問いかけます。本来の夢であったジャズ・バーが宙ぶらりんになっていること、更にセブがキースのバンドのスタイルを好んでいないことにも追求します。

これに対してセブは「君のためにこの道を選んだんだぞ」と言います。安定した仕事につき安定した収入を得る、これがミアの望みだと考えていたセブでしたが、ミアはあくまでその安定は将来の夢(ジャズ・バー)のために必要なものであって、二人の関係を保つためのものではないと思っていました。ここで二人はすれ違っていたのです。

口論になった二人は仲違いし、ミアはセブの家を飛び出してしまいます。この流れが非常に重要です。ここまでのシーンが、僕が最後の空想をセブの世界だと思う要因になっています。

夢の続き

その後、一度夢を諦めかけたミアでしたが、セブの尽力もありスターの道を開くことができ、5年後には大女優として知らぬ者は居ない存在にまで上り詰めました。その道中で結婚相手も見つけ、子宝にも恵まれ人生の絶頂期を楽しんでいます。

一方セブは、夢だったジャズ・バーを開店し店は大繁盛。彼の情熱に動かされたメンバーたちと共にロスの夜を彩っていました。

お互いに違う道を進みながらも夢を叶えたある日、偶然にも二人はジャズ・バーの客と店主として再会します。言葉を交わさずとも、心を通わせる二人。そして空想のシーンに入ります。

空想の中では「もしも二人が結ばれていたら」という設定でもしもの日々が描かれていきます。ミアがパリに飛び立ちスターの門を叩いても、二人の関係は途切れず繋がり続け、結婚をし、子供を産んでいたら。

空想のシーンが終わるとミアは席を立ち、帰り際にセブともう一度アイコンタクト。セブは寂しそうに笑い、エンディングとなります。

愛を求めたセブと夢を求めたミア

さて、本題である「空想はどちらのものか」にいよいよ入ります。

まず大事なのは、最後の時点ではお互いに夢を叶えている、というところです。何度も現実に押しつぶされそうになりながらも、二人は理想の自分を手に入れることができたのです。これだけでも素晴らしいことです。

しかし、最後に二人が向き合うシーンでは、セブだけ悲しみを背負っているように思います。これは、「セブという過去を見つめるミア」と「ミアという今を見つめるセブ」という構図になっているからじゃないかと思います。

二人のこれまでの行動を思い返してみると、両者の行動が一貫していることが分かります。どういうことか。セブは常に愛のために行動をし、ミアは常に夢のために行動をしているのです。少なくとも、両者が出会ってからは。

ミアはセブのために夢を妥協したことはありませんでした。ミアが夢を諦めかけたのは自分が傷つくことを恐れたためで、誰かのためではありません。ツアーへの帯同を誘われたときも、自分の夢のために断りました。

ですが、セブはミアのため(と自分では思っていてもミアはそう思っていませんでしたが)に一度夢を妥協しました。バンドへの参加はジャズ・バー開店の資金を貯めることではなく、ミアとの生活を手に入れるためです。セブはミアと出会ってから、ミアのための行動をし続けていたのです。

セブとミアは求めているものが違ったのです。セブは「夢が叶わなくても二人で一緒にいたい」と願い、ミアは「一緒にいられなくなっても夢は叶えたい」と願っていたのです。だから二人は口論になり、お互いを傷つけてしまいました。夢と現実の折り合い、得るために失わなければいけないもの。その取捨選択を、二人で合わせることができなかったのです。だから、セブが自身の夢を諦め、ミアにも夢を諦める(準備していた舞台を放棄)ように促したとき、ミアは怒ったのです。夢を最優先に考える人だから。「お互いに夢を叶えるんじゃなかったの?」と思っていたことでしょう。

また、その後にセブはもう一度妥協をします。ミアをパリに送り出したことです。本当であればミアについていきたいところでしょうが、自分にはバンドの仕事があり、せっかく道が開けたミアに女優として集中してほしかったこともあり、一度離れることになります。

そして再会。ここで、これまでの人生の選択に未練を残しているとしたらそれはどちらか?もしもの世界を空想するのはどちらか?と考えれば、やっぱり僕の中ではセブになるわけですよ。だって、ミアはセブと離れたことを後悔していないと思うんですよ。「もしも」くらいのことは、確かに考えるかもしれないですけど。彼との時間は素敵な思い出ではあるけど、得たいものを得たし、人生のパートナーも見つけてるし。だから過去。

でも、セブは一番得たかったものを得ていないんですよ。夢は叶えたけど、愛を手に入れていないんです。だから、セブの顔があんなにも切なく見えるんです。だって、店の名前だって「チキン・オン・ア・スティックにする」と言っていたのに、ミアが考えた「セブズ」だし、店のロゴも彼女が考えたものそのままです。彼にとってこのお店は「自分の店」というより「彼女との店」なのです。だから今。

セブにとって、ミアとの時間はまだ終わっていなかったんです。でも、ミアがパートナーとお店に来たことで、時間は終わるんです。今が過去になるんです。ほろ苦い想いと共に。

だから、僕はラ・ラ・ランドのクライマックスが、セブの世界だと思うわけです。

あとがき

まぁ、議論になるということは「個々人で色んな解釈ができる」ということなわけで、僕の持論が正しいか正しくないかは分かりません。そもそも正しさに意味があるのかも分かりませんし。あれがミアの空想だとしても、お互いが一緒に見ていた空想だとしても、納得できるっちゃできるんですけどね。でも、僕の中で一番しっくり来るラ・ラ・ランドの解釈はこうだ!ということで書きました。

でもねー、ミアの空想だったらそれはそれでロマンティックな気もするし、もう切なすぎてよく分からないです!泣ける!でも不幸なわけではない!そんなすごい映画でした。あと、挿入歌の「City of stars」の訳もよかったら調べてみてください。これまた心揺さぶられます。

余談ですが、未だに見ようと思って見ていない秒速5センチメートルがラ・ラ・ランドと似たようなストーリーらしいと。いやしんどい。人生で何度もこの切なさ味わいたくない。でもいつか見ちゃうんだろうなぁ。

追記:この記事を書いたあとに色々な方の解釈を漁ってみると、最後のシーンは「セブとミアが同時に見ていたのではないか」という説が自分の中で濃厚になってきました(笑)。確かに「ラ・ラ・ランド」の言葉の意味を考えると、そういう捉え方の方が作品のテーマに近いかも。途中での空想シーンも二人で一緒に見ていたものっぽいし。でも、この記事の解釈も自分なりに導き出した答えってことで。


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